|
Bois Creative Homepage.This
page is being made for Japanese. If you can understand Japanese, you can
enjoy this page all the more. |
ShortNovel
1999年11月日記に掲載
意識世界
閉ざされた一室、暗い狭いその空間で2人の人が会話している姿が見える。いや、見えるのではない。そのように感じる。感じられる。その2人は会話をしているように聞こえる。その一部を記すことに成功した。
「では質問しよう。君が今そこに存在していると定義した、その理由は。」
「私は私以外の何者でもない。ただそれだけだ。」
「それは解答になっていない。自分が自分であると認知するのは、己の記憶への執着にすぎない。」
「私はそうは思わない。」
「君がそう考えるのは、今まで得てきた経験から導き出された必然だ。君の育つ環境が違えば君は今の君を失うことになる。」
「そうか?しかし私は現に此処に存在している。」
「ではこう質問しよう。人が人であるために必要なものとは。」
「……何も必要ない。条件など何もない。」
「人は長い歴史の中で進化を遂げた。知識を身につけ、言葉を操り、文字によって自分を自分以外の物に定着させる術を手に入れた。しかしそれは自分の存在を、自分自身である一定の枠に閉じこめる副作用をももたらした。」
「何の事か解らない。」
「目に映る自分の姿を見つめ、自分の存在を自身で見つめる。言葉を書き記し、それを見ることで自分の意識を確認する。それは単なる結果に過ぎない。君はどうして言い切れる。君がその『人間』という物体に固着していると。」
「……」
「記憶とは曖昧なものだ。ほんの小さな齟齬や自己撞着をも、それがあたかも実在したかのように認識する。君のその記憶は、実際に君が体験した経験とは限らない。」
「……」
「今こうして私と話をしているという君にとっての事実もまた、他人にとっての現象と異なる。すなわち君が今感じ、見て、聞いているこれらの情報は、君が君という意識の中で紡ぎ出し完結させた、一つの世界に他ならないからだ。」
「しかし私の存在を認めてくれる人は確かに存在している。あなたもそうだ。」
「それは違う。自分の存在を自身で確認できない人間が、どうして他人を識別出来ようか。そしてその人の意図を汲み判断するなど出来ようはずがない。それもまた、君が君という個体に執着する余りに、歪曲され投影した『主観世界』なのだ。」
「……」
「君は存在しているかどうかを、自分で知ることは不可能だ。ただ意識が増大する中で、自分という形を創り出し、その創り出した世界に自己を留めているだけに過ぎない。それはつまり、より大きな可能性や自分の存在を否定し続けることになる。君はそこに留まるべきではない。自己を内部より拡大し、より広大な意識空間へと飛び立つ必要がある。」
「……私は必要と感じない。」
「それは君が今、その小さな意識世界に自分を定着させているからだ。情報の認識や識別の広さは、その人が手に入れ触れられる情報の総量に比例する。現在見ている規模の情報の判断は、より大きな世界における常識を受け入れられない。それは例えるなら3次元世界に住む人が、より高次の世界に住む人の事を想像出来ないのと同じ事だ。」
「……」
「私の属する世界に置いては、他人と自分、人間と動物、動物と物質、そのような区別は存在しない。それらすべては一つの共有する大きな意識世界にたゆたい存在している。私は君であり、君は私なのだ。だから私には、君の考えている事も手に取るように理解できる。今の君に理解しやすいように言えば、一瞬のうちに意識を外部に放出し、全宇宙空間を掌握することも可能だということだ。」
「……それでも私は今の私で居続けたい。」
「そうか。残念だ。この広大な意識空間の崇高さが理解できない愚かな人よ。」
|
Bois Creative Homepage.This
page is being made for Japanese. If you can understand Japanese, you can
enjoy this page all the more. |